屋久島で、「少人数制」という言葉に思う。

「榎田さんのところ、どうひっくり返しても少人数制対応なんだから、もっとどんどん少人数制って言っちゃいなよ。」

というありがたいお言葉を何人かのお客様にいただいていたので、恥ずかしながら前面に出してみました。(笑)

「少人数制で対応します。」はガイド業では割とよく聞かれるものです。

さて、「じゃあ、その少人数って実際何人なの?」って話に、はたして明確に回答できる提供者がどのくらいあるのでしょうか?
あるいは「何に対して少人数なのか?」「本来の適正人数は何人なのか?」
また、あるいは、なぜ少人数が望まれるのかというのもけっこう大事なポイントです。

楽しさのため?
安全のため?
そりゃその考え方だっていろいろで当然です。

言葉だけで考えれば、たまたま少人数っていうのも少人数だし、いつもが大勢だからちょっと少なくっていうアレンジも少人数対応といって間違いではないでしょう。

あるいは定員設定はどうして??って言うのも聞いてみると面白いかもしれないです。
意外とあるのは、「移動の乗り物の定員に依存」だったりして(笑)
(※根拠のある定員設定≧乗り物の定員なら全く問題ないですね)


安全という観点とゲストの心理的余裕の観点から、連れて行く人数を制限しています。
一人でお客さんを連れて行かなきゃいけないとき、スキルレベルや経験値があまりに違う人から新規申し込みがあったら、申し訳ないけど状況説明しておことわり、そして他所を紹介。

初心者さんがベテランさんに気を使う。親子連れがほかの一般の方に気を使う。逆にベテランさんが初心者さんのレベルでしか潜れない。なんてシチュエーション避けられるもんなら避けたいところ。

結果。お客さん一組で締切とか、家族一組で締切とか、結構普通(笑)まあ、そこ営業的にどうよって(爆)

じつはやってることは、以前から全く変わってないんです。これが僕にとっての普通なのであえて少人数制をうたわなかっただけ。
あるいは、ファンダイビングだったらお互い気心とスキルレベルの知れた、常連さんや上級者さんがそろえば、珍しいことではありますが、まあ6人くらい連れて行くこともありますし・・・。

あくまで僕個人の考え方として、ファンダイブであれば、一編成2バディ(二人組=バディ)で4名以下というのが、まああまり反論のでないところの少人数制かなと思っています。
認定されたダイバーによって、ちゃんとバディが機能していれば、少なくともきちんとリーダーが指示を出せばバディ単位でエントリー地点まで戻ることができ、リーダーは要救助者(要救助バディ)対応にあたれるからです。

これが体験ダイビングならば、一編成は1バディ基本2名。全員未経験で右も左もわからないゲストさんを5人6人といっぺんに連れて行くことは正直なにかあった時に怖いんでやりたくないです。

何かトラブルがあった時、体験ダイバーに単独やバディで「さきに帰ってて」とは、なかなか厳しい気がしましてね。正直、二重事故に発展する可能性も決して無視できるものではないかと・・・。
二重事故にならなくたって、目の前でそんな状況があれば「これからも続けよう!」なんてそう簡単になれるものではなくなりますし・・・。
お客さんには冗談半分本気半分で、「僕の手は二本だから一度に助けられるのは二人までね(笑)」なんて話してます。

それと、連れて行く側の能力というものもそこには大きく関係してくるんです。
インストラクターだから大丈夫、指導団体でその人数が連れていけると判断してインストラクター認定されてるから大丈夫っていうのは、一面そうかもしれないけど、物理的な運動能力や体格、パワーなんかもそうだし、経験値とか熟練の技とか、やはりどうやっても千差万別。老若男女、大柄小柄、その性格だってあっちからこっちまで非常に幅広く。その全てがいわゆる団体規定の限界いっぱいの人数を実施の海のコンディションにかかわらず安全に楽しくお連れできるのかということです。

あるいはどんなに少人数をうたっていても、時間もそれに合わせて短くなっちゃってれば、ゲスト一人にかけるコストやリソースは低いという考え方も出来たりしちゃう。
例えば一人のスタッフが「一日2催行(午前午後各1回)で各4名までの少人数制」と、「一日6催行(午前午後各3回)で1セット4名までの少人数制」は、その内容には大きな違いが有ります。もっとも大きいのは「時間が制限される」ということです。心理的にはゲストよりもホストに心理的な影響を及ぼすものだと思います。

ちょっと不安があったり自信が無かったり、あるいは親子、家族での参加だったりならばしっかりみてもらえるほうが安心。時間に余裕があれば、「じゃあゆっくりやってみようか」とか、ゆっくり時間をかけてひとつづつ問題を解決してとか、いろいろな選択肢が増やせるわけです。うまいことスムーズにすすめば、ちょっと水中時間をゆっくりとれたり、上がってからおまけの観光とかだってあるかも知れない(笑)

同時に、貴重な旅行の時間の中なわけで選択肢として短時間で効率よく遊べるのもとても大事。その意味では少人数で短時間という選択肢は全然あり。ただ、次の組の時間が迫ってくればどうしても、慌てちゃったりということもあり得ますし、それを理由に早々に見切っちゃう(体験ダイビングなんかだとわかりやすい。「潜れないからやめましょう」ってやつですね)っていうのもどうしても出てきます。
水への不安がない。何度もやったことがある。なんて方はこちらの選択も考慮していいのかな。

まあ、そこはそれぞれの考え方や相性と言ってよい部分かと思います。
もちろんなぜそういう運用をしているのか?やっている側がしっかり理解していることが必要です。

ただね、人数だけが安全の要因じゃないということも忘れちゃいけない。
たとえ体験ダイビングであっても、事前の準備が一切ない少人数制より、しっかり説明や練習によって基礎能力をあげた複数名のほうが、結果、安全な状態に近づけるというのもまたもう一面の事実。こういう意味では大人数で行く初心者コースこそ、準備(レクチャーや練習)に時間をかけて丁寧に行なわれるべきものなわけですが、実際の運用ではどうでしょうか?

まあ、いずれの場合においても、安全というものを活動時のリーダーの能力や装備に依存、あるいは求めている時点で、参加人数でインストラクターの能力や占有時間をシェアしているということです。
つまり、シェアしたインストラクターの能力や占有時間+自身(の所属するバディ)の持つ活動能力≒安全の値という言い方もできちゃうわけです。

お客さんに満足してもらうため。しっかり安全に(この安全っていう言葉もある意味曲者だと思いつつ、これはまた別の機会に)ってことを徹底しようと思うと、どうしても予約で大人数をドバっととる度胸がない。(笑)

水中という特殊性はあるかと思いますが、そこにはじめてのひとを連れて行くようなプログラムならなおのこと。そんな意味では、同業者の中でも、ぼくは臆病と言われる側の人だと思います(笑)

そんな自分が、余力を持って人数を制限し連れていくことで、より楽しくしっかりと安全に配慮した対応ができるようにしたいと。まあ、そういうことです。