気まぐれにダイビングコンピューター考 02

減圧について・・・。

いまやダイビングの必需品ともなりつつある「ダイビングコピュータ」ですが、その運用について、どうもしっかりと理解されていないような気がします。
以前にも書きましたが、「ダイビングコンピュータ」(以下DC)は「安全のためにダイバーの行動を制限するツールである」ということを忘れてはいけません。

YMSはスタンダードなダイビングを心掛けています。
あらかじめ、減圧停止を想定した潜水は計画しません。

そして、当店で潜られるお客様は約半数がふた桁程度の潜水経験を持つダイバーさんが多いです。その中のさらに半数程度の方はマイギアを持っておりません。逆に言えば残りの方は何らかのマイギアを使っているということです。

僕がまだアマチュアダイバーだった頃は、ちょうどインストラクターを中心にDCが普及し始めた頃で、ゲストにはそれほど普及してはいませんでした。

それが今では、重器材を持っていなくてもDCを持っている方もいらっしゃいます。

そんな普及を見せている状況ですから、一緒に潜った方のDCは機種、メーカーなど千差万別(というほど種類があるのかというのは置いといて・・・)です。

ばらばらのコンピューターをもったお客様のグループだと、ダイビングが終了する頃には結構、NDL(無限圧潜水可能時間)にもバラつきが出てきます。当然、2本目、3本目になればその差はさらに開きます。少し深めだったり、長めだったりすれば、減圧停止指示が出そうなコンピューターもいたりします。

同じグループでダイビングしているわけですから、まあ、そんな極端な潜水プロフィールの違いはでにくいはずなのですが、それでもコンピューターによって大きな差が出ます。

さて、これってどういうことでしょうか?

もっといえば、僕が持っている3種類のコンピューターを腕にして潜るとそれぞれが無限圧潜水可能時間について、ある程度差のある表示をするということです。これは2本目、3本目と反復潜水を重ねるほど極端な差異となって現れます。

さて、そんなDCですが、あなたは自分の持っているDCがどのようにその潜水を管理しているか、厳しい表示をする子なのか、ゆるい計測をする子なのか、知っていますか?

これだけ差のある表示をするということは、DCはまだ完成されたダイビングギア(システム)ではないということです。完璧な窒素計算のアルゴリズムと安全なダイビングの数量化ができていれば、これほどの大きな差は出ないはずです。

というよりも、これだけ表示に差の出ているいわゆるDCというものに、全面的にあなたの体を預けて、ぎりぎりの潜水を行う度胸がありますか?

もちろん、それぞれのメーカーはいくつかの減圧アルゴリズムにのっとり、そしてそれを安全に運用するべくシステムを開発し、DCに積んできています。

古いコンピューターのほうが長く潜らしてくれる(より体に窒素を溜め込むようなプログラムを搭載している)のを考えれば、着実に進化しているといえると思います。

DCは誤解を恐れず極端な言い方をすれば「減圧計」です。
残圧系などと変わらない測定機器なのです。

多少の誤差はあれ、残圧計は、誰がどのメーカーのどの残圧形を使ってもほぼ変わらぬ数値を表示してくれます。だから安心して使うことができるのです。

ところがDCは違います。誰が使っても同じは当たり前ですが、どのメーカーのどのDCを使っても同じというわけにはいきません。というかむしろ普通に違う数値を表示します。

だとすれば、より安全(厳しめ)に余裕をもって使うのが、正しい使い方といえませんか?

ときおり、「俺のDC大丈夫だったよ(減圧指示出なかったよ)」という声を聴いたりします。DCが大丈夫でもあなたの体は大丈夫じゃないかもしれません。

「仕事にするなら長く潜れるコンピュータを使わないとだめだよ」とあえて古いタイプ(DCとしてはもはや骨董品ともいえそうな)のDCを自分でバッテリーを交換してまで使う(良識のあるメーカーは一定以上古いタイプのものについては各種メンテナンスや修理、そしてバッテリーの交換すらしてくれません)業界の方もいらっしゃるようですが、これについては、間違いなくNOです。

「コンピューターがロックするから」という理由で、2台のコンピューターを使いまわすというのももちろんNOですね。

限界を超えること、たくさん潜ることをかっこいいと思う方、思う時期があるかもしれませんし、僕もそう勘違いしそうな時期はありましたが、間違いなく、ただの愚挙、暴挙です。

「お客さんの楽しみのためだから」というのなら、そのお客さんに案内人の身体を危険にさらす片棒を担がせるのは「お客さんのため」ですか?

このような業界人には残念ながらあなたの安全や趣味の時間を任せるべきではありません。

ちょっと調子が悪いときにDCはあなたの体調を勝手に見込んでくれたりしません。

そして皆さん、結構気づいてないようですが、ほとんどのコンピューターには「減圧症に対するいかなる保障もない」「減圧停止を必要とするダイビングはしないこと」が謳われているはずです。DCの減圧停止指示はあくまで緊急避難的なものと考えるべきです。

いわんや、減圧が必要なダイビングを反復で行うことなどもってのほかです。

個人的にお勧めなのは、安全側にシフトする機能(より厳しく制限した表示を行う)を使い、通常よりも一ランク上げて利用することです。

確かに厳しい表示となり、深度下で長時間にわたり活動することはできなくなりますが、やはり体が一番大事です。