よく浮くからこその危うさ。海であそぶ皆さんへ。

皆さん海遊びの時の安全って考えてますか?

ういてまて、とか、ライジャケ着用の推進、とかで、浮くことの大切さを耳にする機会も増え、水辺の安全についての意識の高まりを少しずつでも感じる今日この頃。水辺の活動において、ホント浮くことってとっても大事。

でもね・・・。
実際海でよく見る危うさってほかにもあるんですよ。

で。いきなり結論。

「浮輪やフロートなんかの浮き具は、風にとても弱いので気を付けて使ってね!」

ツアーオペレータとしては少々畑違いの投稿なのは承知ですが、あえて書いちゃいます。

浮輪、ゴムボート、ビーチボール、各種ビーチフロート、などなど、主にPVC製で空気を入れて膨らますタイプの遊具、玩具。

「しっかり浮くし沈まないから溺れないし、安心して遊べるよね!!」

って手放しに安心はできないんだなあ。むしろ状況によっては浮くからこその危うさも持ち合わせてます。(まあ、そもそも安全のためでなく、遊びのための玩具ですから)

(※浮力確保という観点で見れば安全面から有用な面も少なくありません。とても楽しいツールであることも間違いありません。本記事は、これらツールの存在を否定するものではなく、危ない側面もちゃんと知って上手に使ってねってことです)
これらの浮力体を上手に使って「水辺環境で沈まない」ってだけでも、死なないためには何物にもかえがたいアドバンテージですからね。

「すごく浮く」からこその危うさ

まず、この手のツールは、えらい浮力がございます。そりゃ中身がほぼすべて空気なんだから当然といえば当然。海に浮かべてみればその体積、表面積のほとんどは水面より上にあります。人が乗ったりしてもまだまだ水面上部分が多いものがほとんどかと。

で、この水面上の部分が大きいということは、猛烈に風の影響を受けるということです。

水面上に出てる部分って、ちょっと大げさに言ってみればヨットの帆みたいなもん。
ちょっとした風で気持ちよく、そして想像以上に早く流されてしまいます。

じつは、わたくし、海水浴場で監視業務なんかもやってまして、その風景の中では「浮き輪やなんかが、あっという間に風に流されちゃう!」という事態は意外と珍しくもなんともなかったり。

「それだけなら別に命にかかわるようなもんじゃないでしょ?」というお声もありましょうが、ここからつながる行動を考えてみると・・・。

風が岸に向けて吹いていればいいんですけど、沖に向けて吹いていると一気に危うさが露見します。

手元から離れた浮輪やビーチボール。気づけば結構一生懸命追っかけてるでしょ?
そのまま足のつかないところに一直線とか、逃げる浮き具を追ってどんどん沖へ泳いで行っちゃうっていうのもこれまた全然珍しくないんですよ。

じつはこれ結構危ないです。追いつかないことも少なからずあるし、我に返った瞬間「自分の置かれた状況(足はつかないし、くたびれてるし、岸は遠いし、な感じ)にびっくりしてアップアップ」とかあり得ます。

海水浴場なら監視の目もありますし、遊泳エリアがロープやブイで囲われててそれ以上いかないようになってはいます。

まあ、監視の人たちは、沖に向けて風が吹いていれば、流されないようにまず声かけなど注意喚起をします。(状況によっては僕たちがあらかじめ風下で警戒してることもあるので)手伝える範囲で回収したりはしますけど、玩具の回収はあくまで業務のオマケ。

「僕らライフセーバーが絶対拾わなきゃいけないのは皆さん自身の安全であって、申し訳ないけど皆さんの遊び道具じゃないです」

本来の安全管理に支障が出る、監視業務に支障が出るようなら追っかけません。「浮輪追っかけて監視業務おろそか」ってのは絶対イカンので、ホントごめんなさいですけど「遊び道具サヨ~ナラ~」ってことも十分あり得ます。

しかし、さらに深刻なのは、人間ごと風に乗って流されてしまう場合。

これはもう何が何でも回収しなきゃいけないわけですが、そもそも乗ってる本人たちがコントロールできずに流されてるわけで、僕らもそれを引っ張って帰ってくるのはけっこうな大仕事、それなりに時間も労力も必要です。しかもそんな状況なら同時に同じようなことが起きちゃうかもしれません。正直怖すぎです。

子どもの乗ったボート流されて、お父さん泳いでも追いつかず必死。
浮輪で流され自力で帰れず、乗ってる子どもオロオロ。

実際あるんですよ。あるいはそうなる一歩手前の状況なんて結構ごろごろしてます。

これが管理されていない海岸線だったりしたら高確率で漂流への片道切符。

玩具として作られている浮き具はほんと風には無力です。浮輪したままじゃ泳ぎにくいしゴムボートだって効率よく進むようなものでもなし、コントロールしやすいもんじゃないです。

それとライフジャケットとか、アームフロートとかのいわゆる安全装備でも、程度の差こそあれ浮力体である以上、同じような危険は潜在してます。油断大敵。気を付けてくださいね。もっと言っちゃえばちゃんとしたカヤックだって動力船だって、風には相当影響受けます。

僕らのようなオペレーターが引率してスノーケリングしてる時も風の影響ちゃんと考えてますよ。だって実感として流されるのがわかるもん。たかが風なんて侮っちゃいけません。

というわけで・・・。

浮輪やゴムボートなんかの浮き具、安全のための装備じゃないよ。これは玩具です。

「そよそよ」程度の風でも、沖に向けて吹いてるときはあっさり流されちゃうから要注意。

思う以上に「あっ」という間に流されちゃうから、子供を乗せた浮き具から目を放したり離れたりしちゃダメ。

海(だけじゃなく自然全般)って、初心者にも上級者にもプロにも隔てなく、楽しくて優しくて、そして厳しくて怖いです。
「自分だけは大丈夫」なんてこと絶対にありえないので、しっかり準備と注意をして、そのうえで海を思いきり楽しみましょう!!

という、海での事故なんか見たくないスノーケリング&ダイビングオペレーターからのお願いでした・・・。 <(_ _)>